トライアル雇用助成金とは?対象者・金額・申請手続きを徹底解説

最終更新: 2026年4月3日

トライアル雇用助成金厚生労働省ハローワーク就職困難者

この記事でわかること:トライアル雇用助成金の仕組み、対象となる求職者と事業主の要件、コース別の助成額、ハローワーク経由の申請から受給までの具体的な手続き、常用雇用に移行しなかった場合の扱い、活用のメリットと注意点を網羅的に解説します。

1. トライアル雇用とは ― 制度の仕組み

トライアル雇用とは、就職が困難な求職者を、ハローワークの紹介により原則3ヶ月間の「お試し期間」を設けて雇用する制度です。この試行期間中に、企業は求職者の適性や能力を実際の業務を通じて見極め、求職者は職場の雰囲気や仕事内容を確認します。双方の理解が深まった上で、常用雇用(正社員等)へ移行することを目指します。

事業主にはトライアル期間中、月額最大4万円(障害者は最大8万円)の助成金が支給されるため、採用リスクを軽減しながら人材確保ができる制度です。

トライアル雇用の3つのメリット:

1. 採用リスクの軽減 ― 実際に一緒に働いてから常用雇用を判断できる
2. 助成金の受給 ― トライアル期間中の人件費の一部を補てんできる
3. 人材確保のチャンス ― 書類だけでは見えない人材の可能性を発見できる

2. コース別の助成額一覧

コース助成額(月額)トライアル期間1人あたり最大支給額
一般トライアルコース最大4万円/人原則3ヶ月12万円
一般トライアル(母子家庭の母・父子家庭の父)最大5万円/人原則3ヶ月15万円
障害者トライアルコース最大8万円/人原則3ヶ月24万円
障害者短時間トライアルコース最大4万円/人3〜12ヶ月48万円
若年・女性建設労働者トライアルコース最大4万円/人原則3ヶ月12万円

助成額の計算方法:トライアル期間中に就労した日数に基づき日割り計算されます。例えば月の途中から雇用を開始した場合、その月は実際の就労日数分のみが支給対象です。月の全日数就労した場合に満額(4万円)が支給されます。

3. 対象となる求職者の要件

トライアル雇用助成金の対象となるのは、ハローワークに求職申込みをしており、以下のいずれかに該当する方です。

番号対象者の条件具体例
1紹介日前2年以内に2回以上離職・転職がある転職を繰り返しており安定就労が難しい方
2紹介日前に離職している期間が1年を超えている長期失業者
3妊娠・出産・育児を理由に離職し、紹介日前に安定した職業に就いていない期間が1年を超えている出産後の再就職希望者
445歳未満で安定した就労経験がない(ニート・フリーター等)学校卒業後に正社員経験がない若年者
5生活保護受給者自立に向けて就労を希望する方
6母子家庭の母・父子家庭の父ひとり親で就職を希望する方
7日雇労働者・季節労働者・中国残留邦人等永住帰国者・ホームレス等特に就職が困難な状況にある方

注意点:対象求職者は必ずハローワークの紹介を受けている必要があります。自社で直接募集・採用した場合や、民間の人材紹介会社経由の採用は対象外です。また、過去にトライアル雇用を行った同一の求職者を再度トライアル雇用することはできません。

4. 事業主の要件

4-1. 基本要件(全コース共通)

要件詳細
雇用保険適用事業所であること雇用保険に加入している事業所であること
ハローワーク紹介による雇入れ必ずハローワークの紹介を経て雇い入れること
常用雇用への移行意思トライアル期間終了後に常用雇用する意思があること
労働条件の明示トライアル雇用期間中の労働条件を書面で明示すること
トライアル雇用実施計画書の作成・提出雇入れ後2週間以内にハローワークに提出すること

4-2. 不支給要件(以下に該当すると受給不可)

不支給要件詳細
過去の不正受給過去3年以内に不正受給をしたことがある
解雇トライアル開始日前6ヶ月以内に事業主都合の解雇をしている
労働保険料の滞納労働保険料の未納がある
労働関係法令違反過去1年以内に労働関係法令の重大な違反がある
暴力団関係暴力団との関係がある

5. 申請手続きの流れ ― ステップバイステップ

ハローワークにトライアル雇用求人を申し込む
通常の求人票に加えて「トライアル雇用求人」であることを明記します。求人票の「トライアル雇用併用の希望」欄に記載してください。トライアル雇用と一般求人を併用することも可能です(「トライアル雇用併用求人」)。
ハローワークから紹介を受け、面接を実施
ハローワークの職業紹介を受けた求職者と面接します。書類選考のみでの不採用は原則として認められていません。面接を行った上で採否を決定してください。
トライアル雇用を開始(有期雇用契約の締結)
原則3ヶ月間の有期雇用契約を結びます。雇用契約書には、トライアル雇用期間であること、期間満了後の常用雇用への移行を前提としていることを明記します。社会保険・雇用保険への加入手続きも必要です。
トライアル雇用実施計画書の提出(雇入れ後2週間以内)
「トライアル雇用実施計画書」をハローワークに提出します。計画書には、トライアル期間中の業務内容、指導担当者、期間終了後の常用雇用への移行見込み等を記載します。提出期限の2週間を過ぎると受給できなくなるため厳守してください。
3ヶ月間のトライアル雇用を実施
計画書に基づき、通常の業務に従事させながら適性や能力を見極めます。トライアル期間中も通常の労働者と同様に、労働基準法・最低賃金法等の労働関係法令が適用されます。
トライアル期間終了 ― 常用雇用への移行判断
トライアル期間終了後、常用雇用に移行するかどうかを判断します。移行する場合は期間の定めのない雇用契約に切り替えます。移行しない場合は有期契約の満了で終了します。
トライアル雇用結果報告書・支給申請書の提出(期間終了後2ヶ月以内)
トライアル期間終了後2ヶ月以内に、以下の書類を管轄の労働局(またはハローワーク)に提出します。
・トライアル雇用結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書
・出勤簿(タイムカード)の写し
・賃金台帳の写し
・雇用契約書の写し
・常用雇用に移行した場合はその雇用契約書
助成金の受給
労働局による審査後、事業主の指定口座に助成金が振り込まれます。申請から支給まで通常1〜3ヶ月程度かかります。

6. トライアル期間中の労働条件

項目内容
雇用形態有期雇用(原則3ヶ月間)
労働時間原則として通常の労働者と同じ(週30時間以上が目安)
賃金最低賃金以上。試用期間中の減額特例は原則適用なし
社会保険加入要件を満たす場合は加入義務あり
雇用保険週20時間以上勤務する場合は加入義務あり
解雇正当な理由がなければトライアル期間中でも解雇できない(労働契約法に準拠)

重要:トライアル雇用は「試用期間」とは法的に異なります。トライアル雇用期間中も労働基準法が完全に適用され、不当解雇の保護を受けます。「お試しだから簡単に辞めさせられる」という認識は誤りです。

7. 障害者トライアルコースの詳細

障害者の雇用促進を目的としたコースで、一般トライアルよりも助成額が大きく、期間も長く設定されています。

項目障害者トライアルコース障害者短時間トライアルコース
対象者身体障害者、知的障害者、精神障害者精神障害者、発達障害者
助成額月額最大8万円(精神障害者は最初の3ヶ月8万円、その後3ヶ月4万円)月額最大4万円
期間原則3ヶ月(精神障害者は最大6ヶ月に延長可)3〜12ヶ月
労働時間週30時間以上週10〜20時間からスタートし段階的に増やす
最大支給額24万円(精神障害者は36万円)48万円

障害者トライアルの活用ポイント:精神障害者・発達障害者の場合、短時間トライアルコースから始めて徐々に勤務時間を増やす方法が効果的です。最長12ヶ月間のトライアル期間を活用して、無理のないペースで職場定着を図れます。

8. トライアル雇用 vs 試用期間 ― 違いを整理

比較項目トライアル雇用通常の試用期間
法的根拠雇用対策法に基づく助成制度労働契約法・判例法理
助成金月額最大4万円(障害者最大8万円)なし
紹介経路ハローワーク紹介が必須制限なし
対象者就職困難者に限定制限なし
雇用形態有期雇用契約(原則3ヶ月)無期雇用契約(解約権留保付き)
期間満了時常用雇用に移行 or 有期契約満了そのまま正社員として継続
解雇の難易度有期契約の中途解約は原則不可試用期間中は通常より広い解約権(ただし客観的合理性が必要)

9. 活用事例 ― こんな企業が利用しています

事例1: 飲食店(従業員10名)

課題:慢性的な人手不足だが、採用のミスマッチが多く短期離職が続いていた。
活用方法:ハローワーク経由でトライアル雇用を実施。ホールスタッフとして3名を3ヶ月間トライアル。
結果:3名中2名を常用雇用に移行。助成金36万円(4万円×3ヶ月×3名)を受給。ミスマッチを防げたことで定着率も改善。

事例2: 製造業(従業員30名)

課題:精神障害のある求職者の採用を検討していたが、職場定着に不安があった。
活用方法:障害者短時間トライアルコースを利用。週15時間からスタートし、段階的に週30時間まで増やした。
結果:12ヶ月のトライアル期間を経て常用雇用に移行。助成金48万円を受給。段階的に業務量を増やしたことで安定して定着。

事例3: IT企業(従業員15名)

課題:未経験者の育成に時間がかかり、採用コストが高い。
活用方法:45歳未満のフリーター(安定した就労経験なし)をトライアル雇用で2名採用。OJTで技術研修を実施。
結果:2名とも常用雇用に移行。助成金24万円を受給しながら、人材紹介会社を使わずに採用コストを大幅に削減。

10. 申請時の注意点とよくあるミス

10-1. 実施計画書の提出期限(2週間)を守る

トライアル雇用実施計画書は雇入れ後2週間以内にハローワークに提出する必要があります。この期限を1日でも過ぎると助成金が受給できなくなります。雇入れ日にすぐ書類作成に取りかかりましょう。

10-2. ハローワーク紹介を経ていない場合は対象外

必ずハローワークの職業紹介を経て雇い入れることが必要です。求人サイトやSNSで自社に直接応募してきた求職者は対象外です。ハローワークに求人を出し、紹介状を発行してもらう手順を踏んでください。

10-3. 出勤簿・賃金台帳の管理

支給申請時に出勤簿と賃金台帳の写しが必要です。トライアル期間中の出退勤記録を正確に管理してください。手書きの出勤簿でも可ですが、タイムカードやICカード打刻の方が証拠として明確です。

10-4. 支給申請の期限(期間終了後2ヶ月以内)

トライアル期間終了後2ヶ月以内に支給申請書を提出する必要があります。この期限を過ぎると受給できません。トライアル期間終了日を確認し、カレンダーに申請期限を記入しておきましょう。

11. 他の助成金との併用

助成金併用可否備考
キャリアアップ助成金(正社員化コース)条件付きで可トライアル期間終了後に正社員化した場合、別途申請可能
特定求職者雇用開発助成金不可同一の雇入れに対して重複支給はできない
人材開発支援助成金トライアル期間中の研修費用について別途申請可能
業務改善助成金賃上げに伴う設備投資について別途申請可能

おすすめの併用パターン:トライアル雇用(3ヶ月間、最大12万円)→ 常用雇用に移行 → 6ヶ月後にキャリアアップ助成金で正社員化コース申請(最大80万円)。合計で1人あたり最大92万円の助成金を受給できる可能性があります。

12. 必要書類一覧

タイミング書類名提出先期限
雇入れ前トライアル雇用求人票ハローワーク求人申込み時
雇入れ後トライアル雇用実施計画書ハローワーク雇入れ後2週間以内
雇入れ後雇用契約書の写しハローワーク(計画書に添付)雇入れ後2週間以内
期間終了後トライアル雇用結果報告書兼支給申請書労働局期間終了後2ヶ月以内
期間終了後出勤簿(タイムカード)の写し労働局期間終了後2ヶ月以内
期間終了後賃金台帳の写し労働局期間終了後2ヶ月以内
期間終了後常用雇用への移行後の雇用契約書(移行した場合)労働局期間終了後2ヶ月以内

よくある質問

Q. トライアル雇用とは何ですか?

就職が困難な求職者をハローワークの紹介により原則3ヶ月間の試行期間を設けて雇用する制度です。事業主には月額最大4万円の助成金が支給されます。トライアル期間後に常用雇用への移行を判断します。

Q. トライアル雇用助成金はいくらもらえますか?

一般トライアルコースは月額最大4万円×3ヶ月で最大12万円/人です。母子家庭の母・父子家庭の父は月額最大5万円(最大15万円)。障害者トライアルは月額最大8万円(最大24万円)です。

Q. トライアル後に正社員にしなくても助成金は返還不要ですか?

はい、トライアル期間中の助成金は返還不要です。ただし常用雇用に移行しない場合はトライアル雇用結果報告書にその理由を記載する必要があります。

Q. トライアル雇用中に求職者が辞めた場合はどうなりますか?

求職者が自己都合で退職した場合、実際に就労した月の分は助成金が支給されます。例えば2ヶ月目で退職した場合、2ヶ月分の助成金が支給対象です。

Q. トライアル雇用の人数に上限はありますか?

1事業所あたりの人数上限は設けられていません。ただし、常用雇用への移行が前提の制度のため、実態に沿わない大量のトライアル雇用は審査で問題視される可能性があります。

Q. トライアル雇用と試用期間を同時に設定できますか?

法的には可能ですが、トライアル雇用自体が「試行」の性質を持つため、別途試用期間を設ける実務上の意味は薄いです。トライアル期間を試用期間と兼ねる形が一般的です。